「契約不適合責任」の免責特約は有効か無効か?

中古の不動産売買契約においては、「契約不適合責任は免責とする」旨の特約がもりこまれていることがあり、購入にあったっては注意が必要です。しかしながら、前述のような免責特約があっても無効となるケースがあります。本記事では、無効となる4つのケースをまとめていきます。

契約不適合責任とは

まずは前提となる契約不適合責任について簡単にご説明します。契約不適合責任は、「目的物(不動産)が契約したものと違う」ときに責任が生じます。また、2020年の民法改正まで「契約不適合責任」の代わりに「瑕疵担保責任」という言葉が使われておりました。詳しくは2022年5月16日に掲載した「民法改正と不動産売買 瑕疵担保責任から契約不適合責任へ」の記事をご参照ください。

免責特約は有効か無効か

続けて、本題の「免責特約が有効か無効か」について、結論から申し上げると、原則として有効です。しかし、民法その他の法律で定める条件に該当したとき免責特約は無効となります。

免責特約が無効となるケース

では、免責特約が無効となる4つのケースについてご説明します。ケース分けするにあたっては、売主と買主の属性(宅地建物取引業者か、事業者か、消費者か)が非常に重要になりますので注意してください。

①民法による無効

【条件】
①売主・買主の属性に関係なくすべてに適用
②売主が事実を知りながら告げなかった場合に限る

民法572条(担保責任を負わない旨の特約)

「売主は、第562条第1項本文又は第565条に規定する場合における担保責任(※契約不適合責任)を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及びについては、契約不適合責任を免れることができない

②品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)による無効

【条件】
①売主・買主の属性に関係なくすべてに適用
②新築住宅の場合に限る

住宅の品質確保の促進等に関する法律

(新築住宅の売主の瑕疵担保責任)

第九十五条 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から10年間住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、民法第415条、第541条、第542条、第562条及び第563条に規定する担保の責任を負う

2 前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。

③消費者契約法による無効

【条件】 ①売主が事業者、買主が消費者の場合に適用
※「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人である。
※「消費者」とは個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)である。

消費者契約法

(定義)

第二条 この法律において「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。

2 この法律(第四十三条第二項第二号を除く。)において「事業者」とは、法人その他の団体及び事業として又は事業のために契約の当事者となる場合における個人をいう。

(事業者の損害賠償の責任を免除する条項等の無効)

第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。

一 事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項

二〜四 省略

2 前項第一号又は第二号に掲げる条項のうち、消費者契約が有償契約である場合において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合には、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき。)。以下この項において同じ。)に、これにより消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任を免除し、又は当該事業者にその責任の有無若しくは限度を決定する権限を付与するものについては、次に掲げる場合に該当するときは、同項の規定は、適用しない。

一 当該消費者契約において、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該事業者が履行の追完をする責任又は不適合の程度に応じた代金若しくは報酬の減額をする責任を負うこととされている場合

二 当該消費者と当該事業者の委託を受けた他の事業者との間の契約又は当該事業者と他の事業者との間の当該消費者のためにする契約で、当該消費者契約の締結に先立って又はこれと同時に締結されたものにおいて、引き渡された目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないときに、当該他の事業者が、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことにより当該消費者に生じた損害を賠償する責任の全部若しくは一部を負い、又は履行の追完をする責任を負うこととされている場合

④宅地建物取引業法による無効

【条件】 ①売主が宅建業者、買主が宅建業者以外の場合に適用

宅地建物取引業法

(担保責任についての特約の制限)

第四十条 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地又は建物の売買契約において、その目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任に関し、民法(明治29年法律第89号)第566条に規定する期間についてその目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、同条に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならない

2 前項の規定に反する特約は、無効とする。

(適用の除外)

第七十八条 この法律の規定は、国及び地方公共団体には、適用しない。 2 第三十三条の二及び第三十七条の二から第四十三条までの規定は、宅地建物取引業者相互間の取引については、適用しない。

まとめ

もし不動産売買のトラブルにあったときには、契約不適合責任の免責特約があったとしても、特約が無効になるケースがあります。あきらめずによく確認しましょう。

引用元

e-Gov法令検索『民法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

e-Gov法令検索『住宅の品質確保の促進等に関する法律』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=411AC0000000081

e-Gov法令検索『消費者契約法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=412AC0000000061

e-Gov法令検索『宅地建物取引業法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC1000000176

協力

弁護士 片倉亮介(弁護士法人相模原法律事務所)