不動産仲介の仕事をしていると、遺産相続で親族間でもめているために処分できない不動産に出会うことがあります。そして、相続人の1人が勝手に第三者と賃貸借契約をむすび、空き地や空き家になったままの不動産を貸してしまうというのも実際にある話です。このような契約ははたして有効なのでしょうか?事例を踏まえて説明していきます。
事例
Q.甲土地の所有者であり登記名義人のXが死亡したが、相続人のA、B、Cの協議が整わず、登記名義人はXのままです。 その後、第三者Dが相続人Aと駐車場賃貸借契約を結んで使用しています。 その後、相続人BまたはCが、甲土地の明け渡し請求をしてきた場合、第三者Dは駐車場として使用し続けることができますか? 専門用語 ※登記・・・法務局で公開する帳簿に記載すること。登録すれば不動産の権利を第三者に主張することができる。 ※第三者・・・当事者以外の人。 |
相続人同士の関係と契約の有効性
遺産分割協議中の相続人(事例ではA、B、C)は、相続財産(事例では甲土地)を共有しているものとみなされます。そして、相続人Aは第三者Dと賃貸借契約をむすび、共有する甲土地を貸すことができます。
第三者の権利の保護
上記のとおり賃貸借契約が有効であるということは、第三者Dには甲土地を使用する権利が認められます。もちろん、第三者DはA以外の相続人B、Cに対しても権利を主張することができます。
賃料の取り扱い
第三者Dが相続人Aに収める賃料(駐車場の使用料)について、相続人B、Cは共有持分の割合にしたがって賃料の支払いをAないしDに求めることができます。
まとめ
賃貸借契約は有効ですが、トラブルに発展する可能性はあります。 |
参考文献
判例:昭和63年5月20日最高裁