民法改正と不動産賃貸「連帯保証人の極度額ほか」

2020年(令和2年)施行の民法改正に伴い、不動産賃貸における連帯保証人の取り扱いが変わります。

重要な改正点は3つ。「極度額の設定」「事業用賃貸物件における連帯保証人に対する情報提供」「連帯保証人に対する滞納状況等の報告」です。順を追って説明していきます。

極度額の設定

改正後、連帯保証人の極度額の定めが必要になりました。定めのない個人保証契約は無効となります。

改正民法より

(個人根保証契約の保証人の責任等)

第465条の2 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。

2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

3 第466条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。

事業用賃貸物件における連帯保証人に対する情報提供

事業用賃貸物件(店舗、事務所等)においては、連帯保証人が保証契約を締結するにあたり、借主から保証人に対し財産状況等についての情報提供が必要となりました。

改正民法より

(契約締結時の情報の提供義務)

第465条の10 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。

一 財産及び収支の状況

二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況

三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。

3 前2項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

連帯保証人に対する滞納状況等の報告

借主の滞納状況等について、貸主は保証人から請求があった場合に報告すればよいとされています。

改正民法より

(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)

第458条の2 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

施行日

2020年4月1日から

移行措置

①施行日前の保証契約には旧民法が適用される。

②合意により書面にて保証契約を更新する場合には、改正民法が適用される(つまり極度額の定めがなければ無効となる)。

③ 書面による保証契約の更新を行わず、自動更新した場合には、引き続き旧民法が適用される。

附 則 (平成二九年六月二日法律第四四号)

(贈与等に関する経過措置)

第三十四条 施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第五百八十九条に規定する消費貸借の予約を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。

2 前項の規定にかかわらず、新法第六百四条第二項の規定は、施行日前に賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその契約の更新に係る合意がされるときにも適用する。

3 第一項の規定にかかわらず、新法第六百五条の四の規定は、施行日前に不動産の賃貸借契約が締結された場合において施行日以後にその不動産の占有を第三者が妨害し、又はその不動産を第三者が占有しているときにも適用する。

結論

個人保証は避けて、家賃保証会社と保証契約を締結するようにした方が良いでしょう。
既に旧民法において個人保証契約を締結している場合には、書面による契約更新は避けて、自動更新するようにしましょう。

引用元・参考文献

e-Gov法令検索『民法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
法務省『民法の一部を改正する法律(債権法改正)について』
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html