農地の売却1「農地と区域区分」

近年の動向

今まで田んぼ・畑を管理してきた方々が高齢になり、私が経営する不動産会社にも「田んぼ・畑を売却したい」という相談が増えております。相談に来られるのは本格的な農家から、家の近くで家庭菜園をしている一般の方、畑を相続された若い方まで様々です。しかし、共通するのは、多くの方が田んぼ・畑をどのように売却したらいいのか分からないという点でした。そこで、この度ブログで記事にまとめることにしました。

農地(田んぼ・畑)の売却の制限

田んぼ・畑を売るにあたり、最初に知っておくべきことは、土地が存在するエリアによって制限が大きく異なるということです。 都市計画法のなかに「区域区分」という言葉があります。これは、簡単に説明すると、都市を見えない線でエリア分け(これを「線引き」と言う)するもので、「市街化区域」と「市街化調整区域」の2つに分類し、線引きしないエリアは一般的に「非線引き区域」と呼ばれます。売却したい土地がどの区域に属するかは、市役所等の都市計画を管轄する部署に確認することでわかります。最近ではインターネットで情報公開されていることも多く、都市計画図、都市計画マップ等の名称で公開されております。

▼都市計画法の条文
(区域区分)
第七条
 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。
一 次に掲げる土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
イ 首都圏整備法第二条第三項に規定する既成市街地又は同条第四項に規定する近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法第二条第三項に規定する既成都市区域又は同条第四項に規定する近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法第二条第三項に規定する都市整備区域
二 前号に掲げるもののほか、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。

市街化区域における制限

市街化区域内にある農地を売却する場合、農業委員会への「届出」で足り、都道府県知事等の許可は必要ありません。つまり、容易に売却が可能です。

市街化調整区域における制限

市街化調整区域内になる農地を売却する場合、都道府県知事等の許可が必要です。許可基準は多岐にわたりますので、まずは、市区町村の農業委員会、不動産業者、行政書士等の専門家に相談することをお勧めします。

非線引き区域における制限

市街化調整区域内と同様、都道府県知事等の許可が必要です。

▼農地法の条文
(農地の転用の制限)
第四条 農地を農地以外のものにする者は、都道府県知事(農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に関する施策の実施状況を考慮して農林水産大臣が指定する市町村(以下「指定市町村」という。)の区域内にあつては、指定市町村の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 次条第一項の許可に係る農地をその許可に係る目的に供する場合
二 国又は都道府県等(都道府県又は指定市町村をいう。以下同じ。)が、道路、農業用用排水施設その他の地域振興上又は農業振興上の必要性が高いと認められる施設であつて農林水産省令で定めるものの用に供するため、農地を農地以外のものにする場合
三 農業経営基盤強化促進法第十九条の規定による公告があつた農用地利用集積計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第四条第三項第一号の権利に係る農地を当該農用地利用集積計画に定める利用目的に供する場合
四 農地中間管理事業の推進に関する法律第十八条第七項の規定による公告があつた農用地利用配分計画の定めるところによつて設定され、又は移転された賃借権又は使用貸借による権利に係る農地を当該農用地利用配分計画に定める利用目的に供する場合
五 特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された同法第二条第三項第三号の権利に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合
六 農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律第五条第一項の規定により作成された活性化計画(同条第四項各号に掲げる事項が記載されたものに限る。)に従つて農地を同条第二項第二号に規定する活性化事業の用に供する場合又は同法第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画の定めるところによつて設定され、若しくは移転された同法第五条第十項の権利に係る農地を当該所有権移転等促進計画に定める利用目的に供する場合
七 土地収用法その他の法律によつて収用し、又は使用した農地をその収用又は使用に係る目的に供する場合
八 市街化区域(都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第七条第一項の市街化区域と定められた区域(同法第二十三条第一項の規定による協議を要する場合にあつては、当該協議が調つたものに限る。)をいう。)内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合
九 その他農林水産省令で定める場合

(農地又は採草放牧地の転用のための権利移動の制限)
第五条
 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第四項において同じ。)にするため、これらの土地について第三条第一項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、当事者が都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
一 国又は都道府県等が、前条第一項第二号の農林水産省令で定める施設の用に供するため、これらの権利を取得する場合
二 農地又は採草放牧地を農業経営基盤強化促進法第十九条の規定による公告があつた農用地利用集積計画に定める利用目的に供するため当該農用地利用集積計画の定めるところによつて同法第四条第三項第一号の権利が設定され、又は移転される場合
三 農地又は採草放牧地を農地中間管理事業の推進に関する法律第十八条第七項の規定による公告があつた農用地利用配分計画に定める利用目的に供するため当該農用地利用配分計画の定めるところによつて賃借権又は使用貸借による権利が設定され、又は移転される場合
四 農地又は採草放牧地を特定農山村地域における農林業等の活性化のための基盤整備の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第二条第三項第三号の権利が設定され、又は移転される場合
五 農地又は採草放牧地を農山漁村の活性化のための定住等及び地域間交流の促進に関する法律第九条第一項の規定による公告があつた所有権移転等促進計画に定める利用目的に供するため当該所有権移転等促進計画の定めるところによつて同法第五条第十項の権利が設定され、又は移転される場合
六 土地収用法その他の法律によつて農地若しくは採草放牧地又はこれらに関する権利が収用され、又は使用される場合
七 前条第一項第八号に規定する市街化区域内にある農地又は採草放牧地につき、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地及び採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得する場合
八 その他農林水産省令で定める場合

結論

「市街化区域内」にある農地は容易に売却ができるが、「市街化調整区域内」及び「非線引き区域内」にある農地を売却するには、農地法に定める許可が必要となる。

引用元

e-Gov法令検索『都市計画法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089

e-Gov法令検索『農地法』
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000229