民法改正と不動産売買「瑕疵担保責任から契約不適合責任へ」

2020年(令和2年)施行の民法改正に伴い、不動産の売買に関する重要な変更が1つあります。それは『瑕疵担保責任』に代わって、新たに『契約不適合責任』という用語が用いられるようになった点です。まずはそれぞれの性質を確認し、次にその違いに注目していきます。

瑕疵担保責任について

【瑕疵担保責任とは】隠れた瑕疵について売主が負う責任です。
【適用条件】売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき。
【買主の請求権】契約解除、損害賠償請求。

▼旧民法条文

第570条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。

第566条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは損害賠償の請求のみをすることができる。

2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。

3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

契約不適合責任について

【契約不適合責任とは】契約不適合について売主が負う責任です。
【適用条件】引き渡された目的物が種類、品質又は数量が契約の内容に適合しないとき。
【買主の請求権】追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除。

▼改正民法条文

(買主の追完請求権)

第562条 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。

2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

 

(買主の代金減額請求権)

第563条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。

2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。

一 履行の追完が不能であるとき。

二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。

三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。

3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

 

(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)

第564条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。

 

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)

第566条 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から一年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

瑕疵担保責任と契約不適合責任の違い

【適用条件】隠れた瑕疵に限られなくなったため一見適用範囲は広くなったように感じますが、結局のところ契約の内容に適合しているか否かが争点になるため、全ては契約の内容次第と言えます。
【買主の請求権】新たに『追完請求』『代金減額請求』が追加され、買主が切れるカードが増えました。
【請求期限】知ったときから1年以内に『請求』から『通知』に変更。

まとめ

 瑕疵担保責任(旧民法)契約不適合責任(改正民法)
適用条件隠れた瑕疵契約内容との不適合
買主の請求権契約解除
損害賠償請求
契約解除
損害賠償請求
追完請求
代金減額請求
請求期限①知ったときから1年以内に請求。
②消滅時効:引渡しから10年。
①知ったときから1年以内に通知。
②消滅時効:引渡しから10年。知ったときから5年。

引用元

e-Gov法令検索『民法』
https://elaws.e-gov.go.jp/

法務省『民法の一部を改正する法律(債権法改正)について』
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html